勉強ばかりに目を奪われていませんか?
子どもが幼い頃、母親達はほんの小さな変化にも驚き、心から感動して眺めたものです。それなのに・・・・いったい、いつから欲張りになってしまったのでしょうか?
わが子がピカピカのランドセルを背負って登校し始めた頃、お母さんは(車に十分に気をつけているかしら?)(どこかで道草をくっているのではないかしら?)(工事現場のような危ないところで、じっと見ているんじゃないかしら?)と、帰宅するまで心配をしましたね。そして、帰ってきた子どもに、「おかえりなさい!今日は何か楽しいことはあった?」「誰と一緒に遊んだの?お友達、いっぱいできるといいわねえ。」と、うきうきと学校の様子を聞いたでしょう。
ところが、いつしか帰宅した子どもへの質問は宿題のこと、抜き打ちの小テストの事、お友達の○○ちゃんの成績の事・・・と勉強のことばかりになってしまった・・・そんな気はしませんか?
中学受験を終えたばかりのご家庭のお母様方から、こんな泣き笑いしてしまうようなお話をよく聞きます。
「塾に行ってる頃って忙しかったでしょ。とにかく、しっかり食べて、体力つけてがんばってもらうことだけを考えてたんですよね。だから、食事の仕方や、家族としての家の中の事なんか、あんまりうるさくは言わなかったんです。ところが、そんな生活が終わって中学に入ったら、いろんなところが目に入ってしまって・・・食べ方も、何もかも、ちゃんと教えようって思うんです。ところが、中学生になってしまったわが子って、すっかり大人って感じになってしまっていて・・・もう私の言うことなんて真剣に聞いちゃいないんです。何でもかんでも友達、友達、友達・・・家族なんてそっちのけ。何となく最近は、パパとはなるべく顔を合わさないようにしているようだし、私にだってあまり口をきかないんですよ・・・」
子どもが中学受験をしてもしなくても、こういうご経験をお持ちのご家庭は、案外多いのではないでしょうか?
子供が成長していく上で、勉強をする事は、とても大事な事です。自分の好きなことに偏ることなく、多方面にわたって多くの事を学ぶ・・・こつこつと努力をすれば、必ずその努力は実るということを学ぶ・・・がんばって結果を出す事から達成感を学ぶ・・・一人の社会人として成長していく上で、「勉強」そのものもさることながら、勉強をするという行為から学ぶことはとても多く、貴重なことです。
しかし、たった今私が書いたように、「勉強」そのものに目を奪われ、点数や偏差値やそういう無機質なものにばかりに関心が集まり、「勉強という行為」から学ぶべき多くのことをないがしろにしてしまってはいませんか?
たとえば、実力テストの結果が芳しくなかったとして・・・
「どうしてこんなに出来なかったの?何やってたの?遊んでばかりいたから、こんな結果になったんじゃないの?ほんとに・・・何考えてんのよ、恥ずかしいじゃないの、お母さんだって。何よ、コレ・・・」
などと言っていませんか?そんな事を言ってしまうと、当然、子どもはそっぽを向き、小学校高学年、中学生くらいになれば「うっせーなあ、いいだろー、ほっといてくれよ!」「ママってうるさい。さいてー!」こんな事を言う子どももでてきます。
結果が悪くて大喜びをする子供なんて、絶対にいないのです。誰よりも一番恥ずかしい思いをしたり、イヤな気持ちになっているのは、子ども本人なのです。
そういうことを理解した上で、なぜそういう結果しか出せなかったのか、考えさせるほうがもっと大事ですし、その後、良い結果が出せるようにはどうすればよいのか?と真剣に考える事こそ必要だ、と教えるべきです。だって、結果は結果。どんなに言ったって、もう取り返しはつかないのですから。
高校生になると、ほとんどの子どもはすっかり精神的に親離れをします。
そういう時期を迎えるまでに、子どもが家庭の中で学ぶべきことはたくさんあります。極端な言い方をすれば、勉強は必死に取り返すことはできても、「時間」は取り戻せません。
小学校高学年、遅くとも中学生までに学ぶべき道徳心、他人を優しい気持ちで見る目、家族の一員としての自分の役割、家族やまわりへの心配り・・・こういうことは、家庭の中で、家族からしか学べないものなのです。
いくら学業が大事でも、そういう家庭教育を軽んじてはいけません!
ここ10年「子どもの個食」が取りざたされるようになりました。個食とは、たった一人で食事をすること、です。もちろん、様々な理由で個食をせざるを得ないこともあるでしょうね。
塾、クラブ、おけいこ・・・そういう事だって、とても大事ですね。でも、個食に関して言うならば、「個食をさせない!」「個食はいけない!」と叫ぶことよりも、「家族そろって食べる楽しさ」「明るい雰囲気の中で食事をする喜び」を教える事だと思います。
でも、せっかく揃って食事をする時に、成績の話や、下がった成績の話や、苦手な教科の話等々・・・触れられたくない学校での話しばかりが話題になれば、楽しかるべき家族での食事は、子どもにとっては何よりも苦痛なものとなり、自ら進んで「個食」を望んでしまうようになるのではないでしょうか?
学業ばかりに目を奪われていては、たくさんの大事なことを見落としてしまいますよ。